こんにちは、かてぃあです。
少し前まで存在を知らず、ある日気付いて以来気になって仕方なかった場所へとうとう行ってみました。
それは、海上保安庁横浜海上防災基地に隣接した「海上保安資料館 横浜館」です。
入口の上の壁に掲げられた看板の文字が気になります。「海上保安資料館横浜館」までは良いとして、その下に「北朝鮮工作船展示」と書かれているのです。何やら不穏な感じがして、めちゃめちゃ気になりませんか?
今日は、その資料館で「北朝鮮工作船」を見て感じたことを書いてみたいと思います。
横浜赤レンガ倉庫の先に「工作船」!?
私がこの資料館の存在に気付いたのは、かなり最近と言ってもよいかもしれません。
会社を辞めてから、天気の良い日には、横浜港を眺めながら散歩するのが日課になっていて、その日も、山下公園の方から、海沿いにみなとみらい21地区に向かって散歩していました。
横浜赤レンガ倉庫のある赤レンガパークを歩いていたら、海上保安庁横浜海上防災基地の一番端にある屋根が尖ったかまぼこのような形をした建物の壁に「工作船資料館」という看板を発見したのです。
上の写真は、2019年2月中旬のものです。つい最近、看板を変えたようで、私が見学に行ったときには(2019年3月)、壁の看板は「海上保安資料館横浜館 北朝鮮工作船展示」に変わっていました。
ここの存在に気づいてから、行ってみようとは思いつつ、何故か勇気がなくてなかなか行けませんでした。(って、何の勇気?) 多分、「皆がお仕事しているときに工作船を見ている私」を想像するとシュールすぎて、見に行くのに抵抗があったのかもしれません。
しかし、好奇心には勝てず、とうとう意を決して行ってきましたよ。
実際に見てみると、なんとも言えない気持ちになり、色々な感情が湧いてきました。
海上保安庁の横浜海上防災基地は、映画「海猿」のロケ地になった場所でもあります。もちろん、一般人は施設の中入ることはできないので中の様子はわかりません。
しかし、基地に併設されている「海上保安資料館横浜館」には誰でも入って見学することができます。しかも、入館料は無料なのです。
ここは海沿いで、この場所に海上保安庁の基地があったり、巡視船が停泊しているのは、全然不自然ではないのですが、それにしても、資料館の建物の看板の“工作船”と言う文字は、この場所の雰囲気に全くそぐわない異様さを醸し出しています。
資料館の向かいには「横浜赤レンガ倉庫」が、斜め前方には「Marine & Walk Yokohama」があります。日頃、デートスポットとしても人気のある“おしゃれ”で“平和”なこのエリアに“工作船”という看板の文字がまるでそぐわないのです。
2001年12月22日九州南西海域で起きた工作船事件 とは
資料館の中に入ると、いきなり、ボロボロになった大きな船が目に飛び込んできます。
この船が、2001年12月22日に九州南西海域で起きた工作船事件で、海上保安庁の巡視船と銃撃戦の末に、自爆により沈没した船なのです。
この事件がどんな事件だったのかを、資料館でもらったパンフレットから引用してみたいと思います。
平成13年12月22日、海上保安庁は九州南西海域に置ける不審船情報を防衛庁から入手し、直ちに巡視船・航空機を急行させ同船を捕捉すべく追尾を開始しました。同船は巡視船・航空機による度重なる停戦命令を無視し、ジグザグ航行をするなどして逃走を続けたため、射撃警告の後、20ミリ機関砲による上空・海面への威嚇射撃及び威嚇のための船体射撃を行いました。しかしながら、同船は引き続き逃走し、巡視船に対し自動小銃、ロケットランチャーによる攻撃を行ったため、巡視船による正当防衛射撃を実施し、その後同船は自爆用爆発物によるものと思われる爆発を起こして沈没しました。その際、巡視船「あまみ」乗船の海上保安官3名が、約7〜10日間の入院・加療を要する傷害を負いました。
海上保安庁では、事件発生後まもなく、第十管区海上保安本部(所在地:鹿児島県鹿児島市)及び鹿児島海上保安部に捜査本部を設置し、事件の全容解明に向けた捜査を開始しました。
その後、水深90メートルの海底から引き上げた工作船のほか、合計1032点に及ぶ証拠物を回収し、同船の乗組員10名を海上保安官に対する殺人未遂罪等の容疑で書類送検しました(不起訴処分確定済み)。
捜査の過程で、同船が北朝鮮の工作船であったこと、薬物の密輸入に関与していたが疑いが濃いこと等が判明しました。
この工作船は、引き上げられた後、武器などの回収品とともに、鹿児島→お台場と展示され、2004年12月から横浜で一般公開されています。
ということは、もう、15年ぐらいの間、ここ横浜で展示されているということになりますが、正直、全く知りませんでした。
絶対、この前を何度も通っているのに、“工作船”という衝撃的な看板の文字に全く気付いていないなんて、私はもしかしてパラレルワールドにいたのでしょうか?
それとも、昔は、“工作船”という看板を掲げていなかったのでしょうか?
資料館には、平日にも関わらず、次々と見学者が入って来ます。私が行った時にも、大学生のグループや、外国人観光客と思われる人たちも見学していました。
何人かの職員の方(海上保安官?)がガイドをしてくれていて、工作船のことだけではなく、海上保安庁の仕事の内容などを説明してくれます。運が良ければ、かなり詳しい説明を聞くこともできるし、色々な質問も出来ますよ。
館内には、事件の際の音声も流れていて、緊迫した事件当時の様子を感じられます。
また、事件の一部始終を撮影したビデオも見ることができます。画面の中では、海上保安庁の巡視船と工作船の間で銃撃戦が繰り広げられており、工作船が自爆したと思われる瞬間の閃光の様子も見られます。まるで、アクション映画!?と錯覚しそうな迫力でした。
しかし、展示されている工作船のあちこちにある銃痕や、回収された武器をみると、これは映画なんかじゃなくて、現実に起きたことなのだと実感します。
北朝鮮工作船の構造
この工作船の船尾には、観音開きの扉があり、小型船艇が搭載されていたと言うことです。この小型船艇は、小型漁船を偽装していたと言うことですが、中には水中スクーターが格納され、爆発物が2個搭載されているなど特殊な構造になっていたということです。
↑工作船の船尾の観音開きの扉から船内をみたところ
↑工作船に搭載されていた小型船艇
↑小型舟艇の中に格納されていたゴムボートと水中スクーター
北朝鮮工作船から回収された武器
工作船の前には、回収された武器が色々展示されていました。
そのうち、自動小銃、軽機関銃、二連装機銃、ロケットランチャー、無反動砲は、実際に使われた痕跡があったということです。そのほかにも、携行型地対空ミサイルや手榴弾なども回収されています。
こんな武器など、近くで見たことがなかったので、あまり現実感がなかったのですが、実際に海上保安庁の巡視船に向けて使われたことを想像すると恐ろしいです。海上保安官は正に命がけの任務ですね。
↑二連装機銃
北朝鮮工作船から回収された武器以外のもの
その他の回収品には、「金日成バッジ」や、タバコ、缶詰、菓子の袋などがありました。
乗組員の死体の司法解剖と、これら回収された物品から、北朝鮮国籍の工作船及び、北朝鮮国籍の乗組員と特定されたということです。
北朝鮮工作船を見て感じたこと
この工作船に乗っていたのは、訓練された北朝鮮の軍関係者と言われています。そして、この工作船は、九州周辺海域で覚せい剤の取引に使用されていたようです。自爆して沈没した工作船から回収された携帯電話の通話記録から、日本国内の暴力団との通信の記録も確認されているということです。
この資料館には、日本人拉致事件に関するコーナーもありました。
日本人拉致事件に関しては、耳にするたびいたたまれなく辛くて悲しい気持ちになりますが、拉致といい、工作船といい、北朝鮮のトンデモ国家ぶりには怒りを感じてしまいます。
と、ここで、ふと、「引寄の法則」を思い出してしまいました。
望む現実を引き寄せるためには、物事の良い面を見ることが必要だと言います。しかし、北朝鮮のやっていることのどこに良い面などあるというのでしょうか?
だけど、何かに対して、怒ったり、悲しんだりすることは仕方ないとして、これからも、ずっと怒り続けたり、悲しみ続けたりしている限り、怒ったり悲しんだりする現実がずっと続いていくのです。自分が望まないことに焦点を当てている限り、そんな望まない世界しか見ることができません。
本当は、怒りたくないし、悲しみたくない。だいたいそんな世の中が続いて欲しくもありません。だから、許せないことを考えるのは止めにして、こんな世の中だったらいいな、と思うことに焦点を当てるべきなのです。
この事件に対して、世界中の多くの人は、軍の人間が武装した船で他の国に行き、薬物の密輸に関与しているなんてありえないと憤慨するかもしれません。しかし、北朝鮮の工作員たちにとっては、それが国家のための立派な職務で、変だとさえ思っていなかったかもしれません。そう思うと、もし、彼らが北朝鮮ではなくて、他の国に生まれていたなら、こんな任務に就くこともなく、こんなことで命を落とすこともなかったかもしれないと、哀れにさえ思ってしまいます。
まずは、自分が日本人に生まれたことに感謝です。そして、海の安全を守ってくれている海上保安官の方にも感謝です。
改めて、世界中、どんな国に生まれたとしても、みんなが安全に平和に暮らせる世の中であってほしいとと心から望みます。
おわりに
海上保安庁海上保安資料館横浜館には、2001年の九州南西海域で起きた工作船事件で使われた工作船とそこから回収された物が展示されています。
これを見て、いたずらに恐怖心を持つのは良くありませんが、やはり、自分の目で見たら、色々思うことや、感じることがあると思います。きっと、”大人の社会科見学”として興味深いものになることでしょう。(もちろん、子供も見学して良いのですよ。)
興味のある方は、ぜひ、行ってみて下さい。
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